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再会 6

再会

私のミニフィク「Reunion」を日本語に翻訳して下さった日本の読者ayaさんに心より感謝いたします。このストーリーは主に漫画版を元にしていますが、キャンディ・キャンディ FINAL STORYからもいくつかアイデアをお借りしています。多くの時間と労力を割いて下さいましたayaさん、本当にありがとうございました! 本作品を日本語でもお届けすることができ、大変光栄です! Disclaimer:キャンディ・キャンディ原作とキャラクターすべては水木杏子先生、画像はいがらしゆみこ先生、アニメは東映アニメーションに属します。 再会 列車が見知らぬ駅のプラットフォームに向けて刻々と近づいて行くと、「ロックスタウン」という駅名が遠くにきらりと輝いて見えた。キャンディは心臓がどきどきして今にも破裂してしまいそうに感じて、波打つ胸を手で押さえた。ここでアルバートに会える可能性も充分あるという期待を抑えることができなかった。何といってもここは彼が小包を発送した場所なのだ。アルバートの言葉はすでに脳裏に焼きついていた。 キャンディ、 一足先に春のプレゼント どこにいても君の事を想っている…… アルバート これはアルバートも同様に彼女に会いたがっていること、彼が何らかの理由でこの小さな町に滞在していることを強く示唆しているように思えた。 (春のコート、最新の……) 滑らかな生地についた目に見えない埃を、指がひとりでに払い落していた。 (アルバートさんがこの町のどこかで働いてることは大いにあり得るわ。じゃなきゃ、これを買うお金をどこでどうやって手に入れたというの?) 実際、このコートが上質であることが彼女には分かった。このコートの値段は、彼がレストランで皿洗いをしていたときの月給の半分を軽く超えるだろう。 (あのころが懐かしい、お財布はからっぽだったけど……兄と妹のふりをして) 座席が半分ほど埋まった列車の、乗客のいく人かが荷物をまとめ始めていた。突然、キャンディはまるで鋭いナイフを突き立てられたかのように疑念に襲われた。 (もし彼がすでにどこかへ旅立ってしまっていたら?) キャンディは激しく頭を振ってこのネガティブな考えを追い払った。かつてないほどの不安にかられて、持っていた紙片を目の高さに掲げた。それはマーチン先生が描いてくれたアルバートの似顔絵だった。(ありがとう、マーチン先生。これを見たらアルバートさん、きっと喜ぶわ……彼の驚く顔が目に浮かぶよう……) キャンディはくすっと笑った。彼女の顔に満面の笑みが広がる。キャンディは似顔絵に向かってささやいた。「おねがい、待っててくださいね。とうとう来ちゃったの」 キャンディはいつもの楽観的な彼女に戻っていた。彼女は急いで旅行鞄を引っ掴んだ。最初に郵便局がどこか尋ねようと思った。こんな小さな町には、郵便局は一軒だけだろう。 (きっと郵便局の誰かが彼のことを覚えているに違いない……) しかし無念なことに、郵便局には似顔絵の人物に心当たりがある人はひとりもいなかった。彼女はまるで今まさに誰かに胃を一撃されたような気分だった。こう言った人すらいた。「生まれてこの方ずっとここに住んでて、みんな互いに名前を知ってると言っていいほどなんだ。誰かが新しくここにやって来たら気づくさ」 最近町にやって来た訪問者の中には、アルバートはいなかったと言っているのと同じだ。希望が打ち砕かれたとはいえ、キャンディは郵便局の人々にお礼を言った。まばたきして辛うじて落胆の涙をこらえ、喉に込み上げてくるものをぐっとこらえて飲み込んだ。 (これからどうするの?) 彼女は意気消沈し途方にくれて自問した。旅行鞄がいつもより重く感じた。次の列車でさっさとシカゴに帰ったほうがいいのだろうか。そう思いかけたものの、彼女は郵便局の外壁にもたれ、目を閉じて心のありかを探った。 (ここに来るのは時間の無駄だというの? なぜわたしはこんなにもアルバートさんに会いたくてたまらないの? もし彼がなぜここに来たのかって単刀直入にきいてきたら、何て言うつもり? ちょっと寄ってみただけって? 本当にわたしはどうしたいの? 一緒にシカゴに戻ってほしいって頼むの? だけどどうして? アルバートさんはもう記憶が戻って……もう病気で弱っていた彼とは違う……) あらゆる問いかけが押し寄せてきて頭の周りを巡り、頭がクラクラするようだった。キャンディは、どうしたらいいか分からないと言うほどではないものの、ひどく混乱していた。ただひとつ確かなことは、アルバートが彼女の心の特別な場所を占めていて、もう二度と会えないかも知れないと思っただけで、心が張り裂けてしまうことだった。そう、彼はよくどこからともなく現れた。でもまた姿を現してくれる保証はない。これが彼に会えないことが耐えがたかった理由のひとつだ。生涯でふたりがまた巡り合うときが、いったいいつになるのか、まったく見当もつかなかった。 アルバートさんは旅人なのだ、自分に会いに来る義務などないのだと何度自分に言い聞かせても、彼のことが気になって、起きている間はずっと彼の顔が頭から離れなかった。ただむなしく時を過ごしていたわけではない、アルバートを捜すために似顔絵を描こうとすらした。長いこと一緒に暮らしていても、ふたりが友人同士に過ぎなかったのは確かだ。けれども、わざわざここまで来るのに二の足を踏むことはなかった。このチャンスに賭けてみずにはいられなかった。 ちょうどこのとき、おなかがグーと鳴った。そういえば旅の興奮と不安のせいで今朝からあまり食べていない。今はどこか座れる場所を見つけて、次の手を考えるときなのだ。そう思って、キャンディはあてずっぽうに、小さな喫茶店が併設されたパン屋に入った。お茶と大きなクッキーの支払いを済ませると、彼女は隅の静かな席を選んだ。最初の一口を食べようとしたところで、ひとりの中年女性が彼女の席にやって来て挨拶した。「こんにちは、このささやかな、ちっちゃなわが町に今日は何の御用?」 郵便局の人たちが言っていたとおりで、キャンディが新来者であることがすぐに分かってしまった。キャンディはこの女性に向かって笑顔を見せて言った。「最近ここに住み始めた古くからの友人を捜しに来たんです」 キャンディは揺らいだ自信を立て直すべくそう言った。その女性にはキャンディのことはお見通しのようだった。「それで、何か分かったの?」 「今、着いたばかりなんです」クッキーの一口を飲み込んでから、キャンディは答えた。女性は手助けしようとしてくれた。「その人の名は? どんな人?」 キャンディはすかさずアルバートの似顔絵を見せた。残念ながらこの女性も彼を見た覚えがないと言う。「わたしはこういうハンサムな顔は忘れないんだけどねぇ……」...

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